向ヶ丘遊園の思い出
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　西脇　光子

　小田急沿線では、よみうりランドと、向ヶ丘遊園が、遊園地の定番であり
小さいころからよく家族と、出かけたものだった。特に、向ヶ丘遊園の薔薇
園は、私の父がいつも楽しみにしていた。

　６年前に私の産休中に、父と雨が降っていたにもかかわらず、薔薇園に行
き、喫茶店で紅茶を飲んだ。その時、私が会計をしたら、父が「ごちそうに
なっちゃたな」と、喜んでくれたことを思い出す。

　その後、子供が生まれてから、私の両親、夫と子供とで薔薇園と、ウルト
ラマンショーをを見に行った。ウルトラマンを楽しみにしていたのに、息子
は怖がり、父はそれを見て、笑っていた。

　またみんなで行こうねと言っていたのだが、母がその後病気になり、いつ
か元気になったら、と言っているうちに、実現できずに昨年、父が亡くなっ
てしまった。

　もう一度、元気な両親と私たち家族で向ヶ丘遊園へ行きたかったなあと思
う。向ヶ丘遊園が無くなることを聞いて、「時代の流れじゃの。」と、言っ
て一番寂しがっていた父。

　父が大好きだった桜や、つつじなどの自然をこれからも残してほしいと願
う。

雨に濡れた「ばら」は、魅惑的な美しさが


　　　　　
『思い出の向ヶ丘遊園』
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　田島伸夫

　　　　　　　　　　　防衛博覧会
　　　　　　　　　　　それが僕と向ヶ丘遊園との
　　　　　　　　　　　初めての出会い

　　　　　　　　　　　少年の日
　　　　　　　　　　　熊谷の叔父にせがんで
　　　　　　　　　　　連れて来てもらった
　　　　　　　　　　　向ヶ丘遊園

　　　　　　　　　　　東京の大学に進学
　　　　　　　　　　　東京の会社に就職
　　　　　　　　　　　東京で結婚
　　　　　　　　　　　子どもが生まれて
　　　　　　　　　　　川崎市高津区
　　　　　　　　　　　分区して宮前区
　　　　　　　　　　　自宅から向ヶ丘遊園まで
　　　　　　　　　　　クルマで十五分の所に
　　　　　　　　　　　家を買った

　　　　　　　　　　　二人の娘に恵まれ
　　　　　　　　　　　何度となく通った
　　　　　　　　　　　向ヶ丘遊園

　　　　　　　　　　　家が近いので
　　　　　　　　　　　閉園ぎりぎりまで粘（ねば）り
　　　　　　　　　　　遊びつかれた
　　　　　　　　　　　沢山の幸せな家族たちが
　　　　　　　　　　　三々五々と
　　　　　　　　　　　帰路に着くのを見送った

　　　　　　　　　　　ばら園に続く
　　　　　　　　　　　花階段の丘の上に
　　　　　　　　　　　松の木が五本
　　　　　　　　　　　夕陽を背負って
　　　　　　　　　　　空に聳えていた

　　　　　　　　　　　やがて娘たちにも
　　　　　　　　　　　それぞれの生活が始まり
　　　　　　　　　　　最終日のばら園には
　　　　　　　　　　　咲き遅れた真紅のばらが
　　　　　　　　　　　せいいっぱい美しく咲いていた

　　　　　　　　　　　菊祭りにはまだ早い
　　　　　　　　　　　向ヶ丘遊園
　　　　　　　　　　　木洩れ日が残した陽だまりに
　　　　　　　　　　　こべの群れが一筋
　　　　　　　　　　　渦を巻いて踊っていた

　　　　　　　　　　　三月の閉園が決まり
　　　　　　　　　　　名物の十月桜が寂しそうに
　　　　　　　　　　　風にふるえて咲いていた
　　　　　　　　　　　ああ僕の思い出の向ヶ丘遊園

　　　　　　　　　　　眺めの良かった　あの
　　　　　　　　　　　山の上の自然食蕎麦処
　　　　　　　　　　　初めて聴く水琴窟の
　　　　　　　　　　　軽やかな音が
　　　　　　　　　　　ピトキンカンと
　　　　　　　　　　　今も耳に残っている
　　　　　　　　　　　さようなら向ヶ丘遊園
　　　　　　　　　　　ありがとう向ヶ丘遊園



春にはなかった売店も設置されました。

　川崎市公園緑地協会直営の売店は、品数は多いとは言えませんが、やきそ
ば、おにぎり、いなりずしに、あったかい飲み物で、軽く食事をすることも
できます。

　その売店のあるあたりは、これまで池があって、ばら苑全体の要の場所で
したが、漏水や、水源の確保の問題もあり埋められてしまい、ちょっと、無
意味な空間となってしまったのが残念です。

　「ばら苑」を訪れて、「立ち入り禁止」（小田急電鉄）という新しい看板
がやけに目立ちました。旧向ケ丘遊園の約半分が小田急電鉄の所有地、そし
て、個人所有者から借りている土地を加えれば、約３／４の広さになります
ので、その管理をされるのは当然ではあります。

　ばら苑と遊園地地域をつないでいた橋も撤去され、「立ち入り禁止」の掲
示板が「ばら苑」にとって少し目障りですが、「ロイヤルコーナー」の背後
の小田急所有地の斜面はきれいに管理され、「ばら苑」を訪れる人に、気持
ちよく楽しんでもらおうとの気配りも感じられました。

　「ばら苑」はそうした周辺の斜面を含めて、一つの世界を作っているよう
です。